第74章

安藤絵美は手を伸ばして原田桐也に抱きつき、まるで甘える仔猫のように、その逞しい胸板に頬を擦り寄せた。

そんなふうに自分を頼りにしてくる彼女の姿は、原田桐也に立ち去りがたい想いを抱かせ、いっそのこと航空券の日付を変更してしまおうかという衝動にさえ駆らせた。

先に身を離したのは、安藤絵美の方だった。「行って。飛行機に乗り遅れちゃうわよ」

原田桐也は彼女の柔らかい桜色の唇に口づけを落とし、マンションの鍵をベッドサイドテーブルに置くと、名残惜しそうに部屋を後にした。

彼が去った後、安藤絵美もいつまでもベッドに潜り込んではいなかった。すぐに起き上がってシャワーを浴び、着替えて自宅へと戻った。

...

ログインして続きを読む