第79章

「男の人と海外に逃げて三年間も音信不通……それは百歩譲っていいわ。でも、帰ってきた途端にお父さんに会社の株を半分も要求するなんて。お父さんがそれを渡したのも、あなたが戻ってきて、少しでも顔を見せてくれると思ったからじゃないの!」

「それなのに、株をもらったあの日以来、一度も家に寄りつかないなんて……お父さんを悲しませるのもいい加減になさい!」

山本芳はわざと声を張り上げた。その大声に、通りがかりの人々が足を止め、安藤絵美に向けて非難の指を突きつけ始める。

「綺麗な子なのに、見かけによらないわねえ」

「あんた知らないの? 最近は大人しそうな子ほど、中身はとんでもないのよ」

「まだ若...

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