第89章

「ええ、分かってるわ」

安藤絵美はそう言うと、小さく息を吐いた。

古村苗はたまらず安藤絵美に言った。「桐也様が帰ってきたら、正直に打ち明けなよ。じゃないと、桐也様が無駄金使っちゃうだけだし」

彼女がそう言うのも無理はない。なにしろ、このブレスレットをデザインしたのは安藤絵美自身なのだから。

彼女にはもう一つの顔がある。それは国際的に有名なデザイナー、シンディとしての顔だ。彼女が手掛ける服やジュエリーは、各国の社交界で絶大な人気を誇っている。

安藤絵美は頷いた。「ええ。桐也様が戻られたら、ちゃんと話すつもりよ」

彼女だって、桐也様に無駄な出費をさせたくはない。もっとも、桐也様は金に...

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