第90章

「絵美ちゃん、どうかな。あのクズ親父一家の仕業とは限らないよ。もしかしたら桐也様が君を想っているのかもね」

古村苗は安藤絵美をからかった。

安藤絵美は呆れたように彼女を見た。

「桐也様はK市で仕事が忙しいのよ。私のことを考えている暇なんて、あるわけないじゃない」

達也は茶碗に顔を埋めて夢中でご飯を食べていたが、二人が原田桐也の話をしているのを聞きつけ、すぐに小さな頭を上げた。

「ママ、おじさんは一体いつ帰ってくるの? 僕、もう会いたいよ」

脇にいた哲也も言葉を継ぐ。

「僕もおじさんに会いたい」

安藤絵美には、二人の息子の本音が痛いほど分かっていた。

今朝、執事の...

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