第99章

「どうしてだ? 俺の約束じゃ不十分なのか?」

「他に何が望みだ。何でも叶えてやる」

原田桐也は、自分の誓いが安藤絵美の基準に満たなかったのだと思い込み、即座に問い詰めた。

安藤絵美は首を横に振る。

「桐也様、ご存じの通り、私には足りないものなどありません。ただ……結婚というものは、まだ早すぎると思うのです」

原田桐也は落胆の色を隠せなかったが、決して安藤絵美を追い詰めたくはなかった。彼女が心から望んで頷いてくれることを願っているのだ。

そこで彼は言った。

「わかった。では、この指輪は一旦しまっておく。君が俺と結婚したいと思った時、これは君のものだ」

彼の涼やかな瞳がふと翳るの...

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