
紹介
人が行き交うキャンパスの中央広場。夕暮れ時の柔らかな光が、彼女の輪郭を淡く照らしていた。
「好きだ」
震える声で言葉を絞り出した僕の前で、彼女は少し驚いたように目を見開いた。風が二人の間を通り抜け、桜の花びらが舞い散る。
「ごめんなさい」
予想していた言葉だった。それでも胸が締め付けられる。
「実は…もう付き合っている人がいるの」
彼女は申し訳なさそうに俯いた。当然だ。あんなに可愛くて、性格も良くて、勉強もできる彼女に恋人がいないはずがない。
「そっか…」
精一杯の笑顔を作って頷いた。
「でも、勇気を出して言ってくれて嬉しかった。ありがとう」
最後まで優しい彼女だった。
キャンパスを後にする道すがら、なぜか胸の奥がすっと軽くなっていくのを感じた。振られたのに、なぜだろう。
三年間の片思いに終止符を打ったからか。それとも、ただ勇気を出して行動できたからか。
夕焼けに染まる空を見上げながら、僕は思った。
これで、卒業前にやり残したことがひとつ減った。
チャプター 1
専門学校三年生、後期。
クラス委員長が正式に壇上に立ち、三年間の授業がすべて終了したことを告げた。六月中旬に卒業書類を整理し、卒業証書が発行される。それからはこの馴染みのある、それでいて見知らぬキャンパスとも縁が切れる。歓声を上げる者もいれば、物思いに沈む者もいる。私はどちらかというと喪失感が強かった。
あの頃、青春は私たちのすぐそばにあり、指先でこぼれ落ちていった。大学生活の三年間を振り返ると、私が唯一感謝できるのは、「バーチャン」という親友と出会えたことだ。彼と一緒にいると妙に自信が湧いてくる。だって彼は私より不細工だから。これが私が彼と付き合う主な理由でもある。
バーチャンが私の隣に立ち、肩を抱きながら尋ねた。「チューハン、何か心残りはあるか?」
「ある」私はバーチャンに答えた。「ランジンを抱きたいんだ」
「うおっ」バーチャンが大声で叫んだ。「お前、野心でけぇな!そんな下劣な考えよく思いつくな。その勇気はどこから湧いてくるんだ?」
私は窓の外を見つめながら、限りない物思いに沈んで言った。「卒業だぞ。あと百日でこの大学を離れるんだ。その後はそれぞれの道を行き、再会できるかどうかも分からない。彼女を抱いて別れを告げたいと思うのがそんなに過分か?そう思っちゃいけないのか?」
「いいさ、いいさ」バーチャンは私を牽制するように言った。「ランジンを抱きたい奴らが手をつないだら、グラウンドを三周できるぞ。お前は列に並ばないとな」
「てめぇの親父がよ」俺はすごく不満げに罵った。「俺の女神を何だと思ってんだ?切符買って並べば一回抱けるとでも?」
バーチャンは私と議論するのが面倒くさそうな顔をして言った。「もし本当に切符買って並べば抱けるなら、お前にもチャンスはあるかもな。でなきゃ無理だ。あの子はメディア学部の高嶺の花だぞ。お前なんてメディア学部の小さなカスじゃないか。あの子がお前のチューハンって名前を聞いたことあるかさえ怪しいのに、何の資格があって抱けるんだ?強姦でもするつもりか?それにランジンには彼氏がいるみたいだぞ。少なくとも三回は聞いたことがある。BMWでランジンを学校まで送ってくる奴がいるって。どうだ?一気にプレッシャーかかるだろ?」
「ランジンを抱きたい」
バーチャンは私の言葉を無視して言った。「寮の水がなくなったから、後で管理人のところを通ったら水を一桶買おう」
「ランジンを抱きたい」
バーチャンはさらに私の言葉を無視し続けた。「昼飯はどの食堂で丼物を食うか考えようぜ?」
「ランジンを抱きたい」
「行け行け、今すぐランジンに告白してこい」バーチャンはもう呆れ果て、私を挑発するように言った。「あと百日でこの大学を離れるんだろ?その後はそれぞれの道を行き、再会できるかどうかも分からないんだ。やりたいことがあるなら急げよ。兄弟として精神的に応援するぜ。お前がマジでランジンを抱けたら、俺が毎晩串焼きおごってやる。卒業まで毎日な」
こんな発言よくできるな?完全に衝動的だ。俺は彼に「衝動の罰」というものを教えてやらないと。百回以上のタダの串焼きのためにも、ランジンに会いに行って、この件についてちゃんと話し合おう。たとえランジンが俺のことを知らなくても。
昼、バーチャンは俺を学食に連れて行った。彼は食堂の入り口を指差して言った。「見ろよ、お前の女神ランジンが来たぞ。抱きたいんじゃなかったのか?早く行けよ」
バーチャンの指す方向を見ると、ランジンは下に白いスキニーパンツを履き、白いスニーカーを履いていた。上は黄色いブラウスで、ちょうど列に並んで食事を取ろうとしているところだった。これが俺の心の中の女神、三年間無数の男子に妄想されてきた女神だ。
バーチャンはニヤニヤしながら俺を挑発した。「行けよ、今日俺に睡たいって自慢してたじゃないか?行く度胸あるのか?あと百日でこの大学を離れるんだぞ、その後はそれぞれの道を…」また俺の言葉で俺を挑発し始めた。
バーチャンの嘲りにもう我慢できなくて、手の箸を置いて食堂の入り口に向かって歩き出した。バーチャンは少し驚いた様子で、席に座ったまま聞いた。「マジで行くのか?」
俺は彼を無視して、小走りでランジンの前まで行った。当時ランジンは頭を下げてスマホのWeChatを見ていた!俺が彼女の前に立った瞬間、自分の心臓が「ドクン、ドクン」と止まらなく鳴り続けるのを聞いた。呼吸さえ少し乱れていた。鼻血が出てないか心配になったくらいだ。
ランジンは誰かが前に立っていることに気づいて顔を上げ、疑問に満ちた目で俺を見た。
その時、俺たちの距離は1メートルもなかった。こんなに近い距離で彼女の体の香りを嗅ぐことができ、少し酔いしれる感じがした。周りにはかなりの学生がこちらに何か変なことが起きていると気づき、好奇心を持って俺たちを見ていた。ランジンが先に口を開いた。「何か用?」
彼女の声はとても心地よかった。俺は彼女を見て言った。「俺、俺…」くそったれ、俺がランジンに正直に「お前を抱きたい」なんて言えるわけないだろ。
ランジンは興味深そうに俺を見ていた。彼女の赤みを帯びた唇が開き何かを言おうとした瞬間、俺は悪魔に取り憑かれたかのように前に出て、ランジンの腰を抱き、彼女の唇にキスをした。その瞬間、時間が止まったかのようだった。ランジンの目はとても大きく見開かれていた。俺は彼女の息を嗅ぎ、この感覚を楽しみながら、彼女の唇を軽く吸った。周りの音は全く聞こえず、自分の「ドクン、ドクン」という心臓の音だけが頭の中に響いていた。もし時間がこの一瞬で永遠に止まってくれたらどんなに良いだろう?
ランジンの目の中の感情が少しずつ変わっていった。驚きから平静へ、まるで俺の突然のキスを受け入れたかのように。
「ガチャン—」という金属が床に落ちる音が、俺を夢のような感覚から現実に引き戻した。俺は心の中で罵りたかった。どのバカがトレイを持つこともできないんだ?
俺の手はランジンの腰から離れ、彼女の前で緊張して手をこすり合わせた。頭を下げて、ランジンの顔を見る勇気もなかった。平手打ちされる覚悟さえできていた。
しかし、1、2秒経っても、予想した平手打ちは来なかった。俺はようやく恐る恐る説明した。「ごめん、わざと失礼したわけじゃないんだ。卒業したら二度と会えないかもしれないから、卒業前に三年間片思いしてきた君に伝えたかった。俺の青春の日々に君がいてくれてありがとう。結果を求めてるわけじゃない。ただ知ってほしかっただけ」
言い終わると、俺は泥棒が裁判官の判決を待つように立ちつくした。
「ありがとう」ランジンの声はとても小さく、俺以外には誰も聞こえなかっただろう。この二言を言った後、彼女は手を上げて顔の前の長い髪をさらりと整え、微笑んで、黙って立ち去った。
俺はランジンの去っていく背中をぼんやりと見つめ、心の中では喜びと喪失感が入り混じっていた。
「ありがとう」という二言は一体何を意味するのだろう?ランジンが去り、食堂は再び通常の状態に戻った。俺は先ほどのテーブルに戻ると、自分の食事が消えていることに気づいた。
バーチャンは頭を下げて、がつがつと食べていた。俺は尋ねた。「俺のトレイは?」
彼は口いっぱいに食べ物を詰め込んで、不明瞭な声で言った。「食ってる」
俺は不思議に思って聞いた。「お前の飯は?なんで俺のを食うんだ?」
バーチャンは足元を指さして言った。「床に落とした」
くそ、あの「ガチャン」という音を立てたのは彼のトレイだったのか。あんなに美しい夢を壊しやがって。俺はバーチャンを殺したくなるような衝動に駆られた。ところが、バーチャンは涙ながらに訴えた。「チューハン、このクソ野郎、お前俺の女神にキスしやがったな。次は本当に抱くつもりか?もう兄弟じゃねぇぞ。正直に言え、俺の女神は何て言ったんだ?お前、俺の女神と付き合うのか?」
「ありがとう」
「ありがとうじゃねぇよ。こんなに悲しくて苦しいんだ。今夜は串焼きおごれよ。傷ついた俺の心を慰めないと。俺はもう食った。寮に戻って二時間泣いてくる。お前が戻る時は管理人のところで水を一桶買って、ウォーターサーバーに置いとけよ」
「だから、彼女が俺に『ありがとう』って言ったんだよ」
バーチャンはもう何歩か歩いていたが、また悲しそうな顔で戻ってきて、俺に言った。「俺の女神がなんでお前に『ありがとう』なんて言うんだ?まさかお前たちに未来があるとでも?知らねぇ、お前は俺の傷ついた心を慰めないといけない。今夜、串焼きをおごる機会をやるから。そういうことで決まりだ」
くそ、俺に串焼きをおごると言っていたのに。バーチャンが去った後、俺は一人で食卓に座りぼんやりしていた。さっきの出来事を思い出すと、まだ心が甘く感じる。ランジンは最後に「ありがとう」と言った。これはどういう意味だろう?もしかして彼女は俺のことを嫌っていないのか?もしかして俺にはまだ彼女と関係を進展させる望みがあるのか?
バーチャンが去った後、俺はもう一食買った。半分も食べないうちに、外から六、七人の男子が入ってきて、直接俺の方向に向かってきた。そのうちの一人が俺を指さして言った。「こいつだ、ランジンに無理やりキスした野郎だ」
先頭の野郎が怒り出し、椅子の脚を引き抜いて俺に向かって突進してきた。口から大声で罵声を浴びせながら。「てめぇの母ちゃんでも犯すぞ、このクソ野郎。貧乏なカスのくせにランジンに無理やりキスするとは?てめぇの口を潰してやる」
最新チャプター
おすすめ 😍
天使の喜び
「うるせえ!」彼は怒鳴った。彼女は黙り込み、目に涙が浮かび、唇が震えはじめた。しまった、と彼は思った。大抵の男と同じように、泣く女は苦手だった。百人の敵と銃撃戦を交わす方が、一人の泣く女に対処するよりましだった。
「名前は?」彼は尋ねた。
「エイヴァ」か細い声で答えた。
「エイヴァ・コブラー?」彼女の名前がこれほど美しく聞こえたことはなかった。エイヴァは驚いて、頷くのを忘れそうになった。「俺はゼイン・ヴェルキー」と彼は自己紹介し、手を差し出した。その名前を聞いて、エイヴァの目が大きく見開いた。ああ、それだけは、それだけはダメ、と彼女は思った。
「俺のことを知ってるな」満足げな笑みを浮かべた。エイヴァは頷いた。この街に住む者なら誰でもヴェルキーの名を知っている。州最大のマフィア組織で、この街が本拠地だった。そしてゼイン・ヴェルキーは、その組織のドン、大ボス、現代のアル・カポネだった。エイヴァは頭が混乱するのを感じた。
「落ち着け、エンジェル」ゼインは彼女の肩に手を置いた。親指が喉元に触れる。押さえつければ呼吸ができなくなる、とエイヴァは気づいたが、不思議なことに彼の手は心を落ち着かせた。「そうだ、いい子だ。話があるんだ」恐怖を感じながらも、『いい子』と呼ばれたことに苛立ちを覚えた。「誰がお前を殴った?」彼は彼女の顔を傾け、頬や唇の傷を確認した。
私の億万長者のパパを所有して(R18)
序章その一
「膝をつきなさい、アヴァ」彼の声が背筋を震わせる。
「顔にかけて欲しいの、ジョシュ」
「顔だけじゃない。君の中に注ぎ込んで、その清らかな場所を俺のものにする」
******
アヴァは兄の親友に恋をした少女。十二歳年上の彼に全てを捧げたいと思っていた。彼のためだけに自分を大切に守ってきたアヴァ。しかし、ジョシュの秘密を知ったとき、彼女はどうするのか?愛のために戦うのか、それとも全てを諦めるのか?
序章その二
「すごく気持ちいい」私は激しく腰を動かしながら言った。もう一度絶頂を迎えそうで、彼も同じように。
「君も最高だ」彼はそう言いながら、優しく触れてきた。
「あぁっ!」思わず声が漏れる。とても刺激的で熱くなる。「イって」彼がささやく。
******
アシュリーは友達の父親、マンチーニさんに憧れを抱いていた。イタリア出身の彼は年齢を感じさせない魅力的な男性だった。誰にも言えなかったその想いを。友達にすら。しかし、マンチーニさんが学費を払うと申し出たとき、アシュリーは抑えきれずに心の内を打ち明けてしまう。だがある出来事が、彼女の繊細な心を揺さぶることになる。
序章その三
「ベイビー」何度も繰り返す彼。「こんなに馬鹿だったなんて」
「え?」私は目を開けて、彼を見上げた。
「セイディ、ずっと君を求めていた。何年も。夜な夜な君のことを考えていた。でもこんな日が来るなんて」
******
十八歳の誕生日を迎える夏休みを、セイディはこれまでにないほど待ち焦がれていた。親友の父親ミゲルと二人きりになれる機会が、ついに訪れるから。その時こそ、夢が叶うはず。しかし、休暇中、ミゲルの元妻が現れる。彼女は未だにミゲルへの想いを持ち続けていた。セイディはこの試練を乗り越えられるのか?
田舎から来た若いお嬢様は超クール!
ヘンリー氏は遠縁の祖母のもとへとアリエルを田舎へ送り出した。数年後、祖母が他界し、アリエルは家族のもとへ戻ることを余儀なくされた。実家では誰もが彼女を敵視し、嫌悪の対象となっていた。彼女の居場所は自室か学校しかなかった。
夜、自室で携帯が突然鳴り響く。
「ボス、お元気ですか?私のこと恋しくありませんでした?ご家族は優しくしてくれてますか?やっと私のこと思い出してくれて、うぅ...」
「用件がないなら切りますよ」
「あ、ボス、待って、私―」
田舎育ちのはずなのに、どうしてこんなことに?貧しくて見捨てられた存在のはずでは?部下らしき人物からこんな媚びた態度を取られるなんて、一体?
ある朝、通学途中、ギリシャの神のような容姿を持つ見知らぬ男性が現れる。冷酷で仕事人間、女性との距離を置くことで知られるベラミー・ハンターズだ。驚くことに、彼は突然アリエルに送迎を申し出る。女性嫌いのはずなのに、一体何があったのか?
かつての仕事人間は突如として時間に余裕ができ、その時間のすべてをアリエルの追求に費やすようになった。アリエルへの悪評は必ず彼によって否定される。
ある日、秘書が彼のもとへニュースを持ってきた。「社長、アリエルさんが学校で誰かの腕を折ったそうです!」
大物実業家は鼻で笑い、こう答えた。「バカげている。あの子は弱くて臆病で、蝿一匹傷つけられないんだ。誰がそんなデマを流しているんだ?」
教授の誘惑
私は彼の口に向かってうめき声を上げ、彼の親指に合わせて体を動かし、解放を求めて腰を突き上げた。「トム、お願い」と彼の唇にささやいた。
「サラ、イってくれ」と彼は低く唸り、指をクリトリスに強く押し付けた。「俺の手の中で感じさせてくれ」
サラは彼氏のマットと完璧な愛を見つけたと思っていたが、壊滅的な裏切りが彼女の世界を粉々にした。慰めを求めて、彼女は謎の男との情熱的な一夜を過ごすが、その男が新しい教授のトムであることを知る。
トムの世界は見かけとは違っていた。彼は億万長者の息子であり、父親は彼に教授職を辞めて家業を継ぐよう圧力をかけていたのだ。
サラは心の声に従う勇気を見つけることができるのか、それとも社会的な規範や過去の裏切りが二人を引き裂いてしまうのか?
一晩の契り、社長様、優しくしてね
翌朝、慌てて服を着て逃げ出し、オフィスに到着した時、驚いたことに、あの夜を共にした男性が新しく着任した社長だったのだ……
妊娠を隠して退職…社長は後悔の涙を零す
しかし、彼女の沈黙と忍耐に慣れていた彼は、彼女を手放すことを拒んだ。彼女の心を取り戻そうと必死になる中で、彼は気づき始めた。本当の幸せは、ずっと彼女の手の中にあったことを...
九十回目の果てに奏でるG線上のアリア
中島優子が息子の光を連れて帰国してから、修はずっと彼ら母子のそばにいた。
「修、今日が何の日か覚えてる?」
「ごめん早子、今日は用事があるから家には帰らない」
修はいつもこうして早子を傷つけていた。
九十回目まで——。
「修、離婚しましょう」
妊娠したから、会社を辞めました
しかし、彼がお金持ちの令嬢と結婚するというニュースが届きました。
もう従順な代役を演じることを望まず、私はこの不埒な男との関係を断ち切り、妊娠を隠して去ることを選びました。
5年後、私は驚くべき変貌を遂げ、数十億ドル規模の企業グループの後継者となり、「投資銀行の女神」という称号を得て、金融界で高い評価を受けるようになりました。
最後に再会した時、5年間必死に探し続け、その過程で正気を失いかけていた彼は、すべての尊厳とプライドを捨て去り、卑屈に懇願しました。「どうか、拒絶しないでください...」
彼らが私に触れるとき
服従のゲーム
舌を彼女の中に深く差し込んだ。欲望に震える自分のモノを数回撫でて、なんとか落ち着かせようとした。彼女の甘美な場所を、身体が震え始めるまで味わい続けた。指で彼女の敏感な部分を愛撫しながら、優しく舐め続けた。
***
ティアは、あの夜の出来事が自分の手に負えないものになるとは思ってもみなかった。
新しい職場で一夜を共にした相手と再会することになるなんて。しかもその相手は、自分の上司であるドミニク・チェイスその人だった。彼は彼女を求め、服従を望んだ。彼女が従わないことで仕事上の関係は危うくなり、彼は決して諦めようとはしなかった。
元カノの突然の妊娠と失踪は皆を驚かせ、二人の関係は停滞してしまう。ある夜、ティアが姿を消し、心に傷を負って戻ってきた時、ドミニクは答えも見つけられず、ただ苦しむばかりだった。
ティアは決して諦めず、愛する男性を手放すまいとした。彼を守るためなら、どんなことでもする覚悟だった。自分を傷つけた者を見つけ出し、その報いを受けさせようと決意していた。
息もつかせぬようなオフィスロマンス。ドミニクはティアを思いのままにしようとするが、様々な試練を経験したティアが彼に従うかどうかは時が教えてくれるだろう。二人はハッピーエンドを迎えられるのか、それとも全てが灰燼に帰すのか。
突然の結婚で、大物に溺愛されました
「やっと、見つけた」
男性は彼女を大切そうに抱きしめながら、そうつぶやいた。
一夜の過ちから始まった突然の結婚。しかし後になって、その男性が財務部の大臣であり、大手企業グループのCEOだということを知る。そして更に、失われていた8年間の記憶の中に、自分が並々ならぬ身分の持ち主だったという事実が徐々に明らかになっていく……