第8章

高級寿司店の照明は柔らかく、それでいて眩しくはない。神谷拓は私のために、最新鮮のネタを慎重に選んでいる。

彼はわざわざ静かな隅の席を選んで、私たちの会話が邪魔されないように配慮してくれた。

「安藤さん、この店の鮪の寿司は東京で一番ですよ。ぜひ味わってみてください」

神谷拓は微笑みながら言った。その瞳には、私が見慣れた優しさが宿っている。

私たちはまず、いくつかの業務提携の詳細について話し合った。立花大介の件以来、神谷グループと江川家の協力関係はますます緊密になっていた。

神谷拓の提案はいつも的確で、江川家の会社を徐々に苦境から抜け出させてくれた。

「安藤さん、実は今日お...

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