第10章 艶めかしい

「ああ」黒木蓮は短く頷いた。

陽光が黒木蓮の横顔を縁取り、その頬の産毛さえも、まるで柔らかな光のフィルターを通したように輝いて見えた。

白石凛は思わず、大学の入学式のあの日を思い出した。

あの時も、彼はこうして陽光を一身に浴び、その端正な顔立ちは黄金色の輝きを帯びていた。

天の寵児とは、陽光にさえ愛される人のことなのだろう。

「あなたも近くに住んでいるの?」白石凛は尋ねた。

黒木蓮は隣の棟を指差した。「普段はあの棟に住んでいる。七階だ」

「七階?」

それなら、自分の家の真向かいではないか。

文月アンナが先にそのことに気づき、意味深長な笑みを浮かべた。「あら、二人ともご近所さ...

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