第12章 離間工作

黒木蓮が会場の入り口に戻ったその時、そこには一触即発の空気が張り詰めていた。

入り口で待機していた相井新一は、恐る恐る黒木蓮の顔色を窺う。

「黒木社長、先に五十嵐さんをご案内しましょうか?」

これは絶好の『窮地の美女を救う』シチュエーションだ。この機を逃さず助け船を出せば、美人の心を一気に掴めるのではないか?

「必要ない」

黒木蓮の視線は白石凛の立ち姿に注がれており、その手はわずかに拳を握りしめていた。

男は平然とした口調で言い放つ。

「クロキ・ホールディングスのデザイン・ディレクターを務めるつもりなら、この程度の修羅場は自分で切り抜けてもらわなければな」

相井新一は心中で密...

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