第15章 棘のような思い出

黒木蓮が自分の車の横を通り過ぎていく。

その視線がこちらに向けられそうになった瞬間、西園寺昴は力任せにアクセルを踏み込んだ。車は猛スピードで弾かれたように走り出す。

随分と距離が開いてから、ようやく西園寺昴は車を停めた。

ハンドルを握りしめていた手を離すと、掌は冷や汗で濡れていた。

大学時代から、彼は黒木蓮という男に激しい嫉妬心を抱いていた。

黒木蓮こそ、真の意味で神に愛された寵児だった。

名門の出身でありながら、デザインへの夢を追うために国内最高峰の大学を蹴って海都へとやって来た男。

彼が望めば叶わぬことなどなく、その求愛者の列は海都の正門から街の外まで続くと言われるほどだっ...

ログインして続きを読む