第3章

白石凛は、西園寺昴の誕生日にどのような形でサプライズを贈るか、既に心に決めていた。

胸が高鳴るのを抑えられない。

その日はすぐにやってきた。

だが、凛が目を覚ました時、隣は既に空っぽだった。

布団は冷え切っており、昴がいつ出て行ったのかも分からない。

凛はゆっくりと身支度を整え、念入りに薄化粧を施すと、ナイトテーブルの引き出しから隠しておいた検査報告書を取り出した。

心は躍り、顔には隠しきれない笑みが浮かんでいる。

一刻も早く昴にこの吉報を伝えたい。彼はきっと大喜びするはずだ。

家から会社までは車で三十分ほどの距離だ。

凛は今、車が少しでも速く進むことだけを願っていた。

彼女は未来について多くの夢を描いていた。しかし、休憩室のドアを開け、昴に寄り添うように座っている神田ミユの姿を目にした瞬間。

まるで頭から冷水を浴びせられたかのような感覚に襲われ、全身の血液が冷え切っていく。

彼女の顔から血の気が瞬時に引いた。

そして昴も彼女の存在に気づき、慌てた様子で立ち上がった。「凛、どうしてここに?」

凛の視線は、床に投げ出された一枚の薄い紙に釘付けになっていた。

昴の瞳孔が収縮し、反射的にその紙を拾おうと駆け出す。

だが、凛はどこからそんな速度が出たのか、彼より一瞬早くその紙を掴み取った。

白地に黒い文字ではっきりと記されている。妊娠検査報告書。

妊娠しているのは、神田ミユ。

凛の報告書を握る手が、止まることなく震えていた。あの口紅、そして神田ミユからの挑発的なメッセージが、突然脳裏に蘇る。

そうか。

そうだったのか……。

昴は胸騒ぎを覚え、急いで凛のそばに歩み寄った。「凛……」

彼が弁解する間もなく。

神田ミユが申し訳なさそうに目を伏せ、低い声で謝罪を口にした。「ごめんなさい、お姉ちゃん。私が悪いの。私のせいで二人の関係を壊さないで」

凛は勢いよく顔を上げ、彼女を睨みつけた。

神田ミユの声は罪悪感に満ちていたが、その瞳の奥には明らかな挑発の色があった。これまで何度も彼女のものを奪ってきた時と同じ目だ。

昴の眼差しが刃のように鋭くなり、厳しく叱責した。「黙って出て行け」

神田ミユは気まずそうに部屋を出て行った。

広々としたオフィスには、二人だけが残された。

昴は凛の蒼白な顔と、瞳の奥にある悲痛と絶望を見て、自分の心が砕け散るような感覚に陥った。

「凛、説明を聞いてくれ。君が思っているようなことじゃないんだ」

彼は手を伸ばし、凛を引き留めようとした。

しかし凛は激しく彼の手を振り払った。見開かれた瞳は苦痛と、裏切られたことへの信じ難い思いで満ちていた。

「これ以上、何を説明するというの?」

彼女の声は震え、一文字一文字に渾身の力が込められているようだった。

「私が見つけなかったら、あとどれくらい隠し続けるつもりだったの? これがあなたの言っていた『過ち』?」

最後の一言を口にした時、凛の瞳から涙がこぼれ落ち、小さな顔を伝った。

昴は焦って歩み寄り、涙を拭おうとしたが、凛の瞳にある警戒心を見て、無理やりその手を下ろした。

「凛、聞いてくれ。俺は君を裏切っていないし、君に顔向けできないようなことは何もしていない。これは俺と祖父との取引なんだ」

彼はできる限り声を優しくした。

「祖父は西園寺家を継ぐ子供を欲しがっている。この目的さえ達成すれば、もう俺たちのことに口出しはしないと約束したんだ」

凛は信じられないという表情で、心臓をナイフで抉られるような痛みに耐えながら、一歩後ずさった。

「つまり、私に他の女との間にできた子供を受け入れろと言うの?」

昴は眉間に深い皺を寄せ、苛立ち紛れにネクタイを緩めた。

「神田ミユの腹の子は人工授精だ。俺は彼女に指一本触れていない。俺はずっと誓いを守っている」

凛の背中は冷たい壁に押し付けられ、鋭い爪が掌に食い込んでいた。

彼女は立っているのがやっとの状態で、壁に寄りかかるしかなかった。

なんと滑稽で、なんと皮肉なことだろう。

昴は二人の未来のためという名目で、彼女に何の相談もなく、あの女の子供を受け入れさせようとしているのだ。

自分の子供に、異母兄弟や姉妹などいてほしくない!

長年、彼女はその被害を受け続けてきた。どうして自分の子供に同じ苦しみを味わわせることができようか?

凛の顔は涙で濡れ、今にも壊れそうな人形のようだった。

昴は自分の心を鋭利な刃物で切り裂かれたように感じた。

彼は言った。「凛、君がすぐにこの事実を受け入れられないのは分かっている。だが、俺がしたことは全て俺たちの将来を考えてのことだ。君だって、俺たちの未来にまだ西園寺家が干渉してくるのを望んではいないだろう?」

凛は強く目を閉じた。長く息を吐き出し、かつて骨の髄まで愛した男を見つめる。

「西園寺昴、もし私が二者択一を迫ったら、あなたは私を選ぶ? それともあの子供を選ぶ?」

昴の表情が強張った。「凛、互いの立場に立って考えよう。この子が生まれたら、神田ミユには親権放棄の書類を書かせて海外へ送る。これは俺たち二人だけの子供になるんだ。彼女とは何の関係もなくなる」

彼は一つ一つ言い聞かせるように続けた。

「君が妊娠するためにずっと体を整え、あんなに不味い薬を飲み続けてきたことは知っている。俺だって君が苦しむのを見たくないし、出産の苦しみを味わわせたくないんだ。どの角度から考えても、この子を受け入れるのが最善の選択だ」

凛の心の底に残っていた僅かな希望が、この瞬間、跡形もなく消え去った。

彼女は昴の顔を仔細に観察したが、そこには一片の罪悪感も、謝罪の色も見当たらなかった。

その瞬間、凛は目の前の男のことを、これまで一度も正しく理解していなかったのではないかという錯覚に陥った。

掌は爪で食い破られ、血が滲んでいる。彼女はゆっくりと手を開き、幽霊のような声で言った。

「離婚しましょう」

昴は一瞬で狼狽した。「駄目だ、絶対に離婚なんてしない」

数千億の商談の場でさえ顔色一つ変えない男が、この瞬間、ついに取り乱した。

幼い頃からの環境で感情を隠す術を身につけてきた彼が、失態を見せるのはこれで二度目だ。

一度目は凛にプロポーズし、彼女が頷いた日だった。

昴は狂喜乱舞し、まるで流星が頭上に落ちてきたかのような衝撃を受けた。

あの日が彼の人生で最も幸福で楽しい時だったとすれば、今は最も苦痛で無力な時だ。

「凛、聞いてくれ。俺は本当に君を裏切るようなことは何一つしていない。俺たち二人は辛酸を舐め、長い年月をかけてようやく今日まで辿り着いたんだ。本当にそれを捨ててしまうつもりか?」

昴はようやく凛の手を握りしめた。

胸の奥がずきずきと痛む。

だが、凛とて同じだった。

彼女の顔は紙のように白く、長年愛し続けた男を見つめていた。

言葉を覚えた頃から互いを知っている仲なのだ!

二人して周囲から排斥され、互いに身を寄せ合って暖を取り、よろめきながらここまで歩んできた。

歳月は瞬く間に過ぎ去ったが、共に経験した出来事、あの愛と喜びを、彼女は永遠に忘れないだろう。

鮮明で甘美であればあるほど、今の裏切りがどれほど滑稽なものか際立ってしまう。

「西園寺昴、私が今どんな気持ちか分かる? 自分がピエロになった気分よ」

「かつて私が誇らしげに語っていた幸福が、今では平手打ちとなって私の顔を張っている」

凛は一言一句噛み締めるように言い、ゆっくりと、しかし力強く自分の手を引き抜いた。相手の途方に暮れた表情を見ながら、ゆっくりと後ずさる。

昴は空っぽになった掌を見つめ、突然胸のあたりもごっそりと抉り取られたように感じた。

「いやだ、凛。君が望むものは何でもやる。だから俺から離れないでくれ」

「チャンスはあげたわ。二者択一を迫った時に」

「西園寺昴、私たちもう大人でしょう。目を覚まして」

凛は深呼吸をして背を向け、目尻からこぼれ落ちそうになった涙を拭った。

「明日、離婚の手続きに行きましょう。大人のやり方でこの結婚を終わらせたいわ。法的手段を使うことも辞さないつもりよ」

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