第66章

須藤絵美は目を丸くし、とっさに手で口を覆った。

だが橘詩織は、その瞳の奥に隠しきれない悪意と得意げな色が滲んでいるのを見逃さなかった。

「あらっ」

彼女はわざとらしく声を上げた。

「橘さん、本当にごめんなさい。わざとじゃないのよ。大丈夫ですか? 淹れたてで熱かったでしょう、火傷してないか見てくださいな」

口先では謝罪を並べ立てながら、彼女は身を乗り出して背後の野次馬の視線を遮り、二人だけに聞こえる音量で嘲るように付け加えた。

「でもね、橘さん。身の程知らずな真似をして無理やり入り込もうとするから、こうやってバチが当たるのよ」

彼女は一拍置き、大袈裟に舌打ちをして残念そうな顔を作...

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