第67章

「待ちなさい」

霧島湊は片手を挙げて須藤絵美の話を遮ると、鋭い視線を彼女に向けた。

「須藤ディレクター。先ほど君は、コーヒーを持って彼女の横を通ろうとしたと言ったな?」

須藤絵美は不意の問いに虚を突かれ、反射的に頷いた。

「ええ、そうですが……」

霧島湊はさらに問い詰める。その口調はあくまで平坦だが、拒絶を許さない圧力を孕んでいた。

「この廊下は狭くない。二人が並んで歩くにも十分な幅がある。君は具体的に、彼女のどちら側を通ろうとしたんだ? 右か、それとも左か」

須藤絵美の心臓が早鐘を打つ。

あの時、彼女は明らかに橘詩織の位置に狙いを定め、真っ直ぐにぶつかっていったのだ。

だ...

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