第69章

午後。

久しぶりの柔らかな日差しが、ショッピングモールの巨大なガラス窓から降り注いでいる。橘詩織は一人、広々とした回廊を歩いていた。磨き抜かれた床に、彼女のすらりとした影が落ちる。目ざとい店員がすぐに駆け寄り、満面の笑みで迎えてくれた。

「お客様、何かお探しでしょうか?」

詩織は礼儀正しく微笑んだ。

「ええ、まずは自分で見せていただくわ」

そう言うと、彼女は軽く会釈をして、ハイブランドのフロアへと足を向けた。ショーウィンドウ越しに並ぶ精巧な品々に視線を落としながら歩き、やがて至高の職人技で知られるある皮革専門店の前で足を止めた。

このブランドは、控えめな豪華さと非の打ち所がない職...

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