第35章 白石麻里奈の狂気

綾瀬美月はハルを抱きしめ、医療スタッフによって慎重に医療室へと運ばれていく橘奏太の姿を見送り、ようやく安堵のため息をついた。

同時に、氷室龍一が突きつけてきた、あまりに不釣り合いな要求を思い出し、再び小さく息を吐く。

結局のところ、彼女はまた彼に一つ、大きな借りを作ってしまったのだ。

南東の港。

桐島蓮は何かに憑かれたかのように、動かせるリソースを全て動員していた。

プライベートジェットで最速で現地入りした彼を待っていたのは、燃料を満載し、出航準備を整えた最高級パワーボートだった。

彼の脳裏を占めるのは、ただ一つの思考のみ。

急げ、もっと急ぐんだ!

取り返しのつかないことにな...

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