第50章 なぜ私を押した

綾瀬美月がついに顔色を変えたのを見て、白石麻里奈の瞳の奥に、思惑通りといった光が走った。

彼女は体を起こすと、声音を普段の調子に戻し、絶妙な案じ具合を装って言った。

「美月、あなたがずっとお母様を探しているのは知っているわ。実は私、少し心当たりがあるの。きっとあなたの役に立つと思う。仕事が終わったら、下の『喫茶・静寂』で待ってる。少し話しましょう。……私に謝るチャンスをくれると思って、ね?」

そう言い終えると、彼女は綾瀬美月の返事を待たずに踵を返した。その背中は優雅で、まるで友好的に旧交を温めに来ただけであるかのように見えた。

綾瀬美月はデスクに座り込んだまま、モニターに映る図面がぼ...

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