第68章 私が作った

仕事を終えてマンションに戻った綾瀬美月は、頭の中を渦巻く雑念を意識的にシャットアウトした。

彼女は努めて明るい表情を作り、息子の綾瀬陽と一緒にリビングのカーペットで積み木遊びに興じる。

子供の無邪気な笑顔こそが、今の彼女にとって最良の慰めであり、心に立ち込める暗雲を一時的にでも払拭してくれる特効薬だった。

ニコルがカットフルーツを持って近づき、何気ない風を装って言った。

「綾瀬さん、午後、桐島様からお電話がありました。ここ数日のご様子を気にされているようで」

積み木に伸ばした美月の手がぴたりと止まる。顔は上げず、ただ淡々と「そう」とだけ応じた。

ニコルは彼女の顔色を窺いながら続け...

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