第69章 私の家から出て行って

後頭部を締めつけていた熱い拘束がふいに解け、次の瞬間、粘りつくような生温かい液体が彼女の顔一面に飛び散った。

大柄な男がカッと目を見開いている。その額には鮮血を噴き出す風穴が穿たれていた。

男は棒きれのように、どうと後ろへ倒れ込む。

綾瀬美月は全身を硬直させ、大きく見開かれた瞳で、銃を構えたまま一歩一歩近づいてくる氷室龍一を凝視した。

彼の顔には他人の返り血と、彼女の顔に掛かったものと同じ紅い飛沫が混じっている。その瞳は氷河のように冷徹で、正確に彼女だけを捉えていた。

彼は彼女の前に立つと、腰を抜かして震える彼女の無様な姿も、血に塗れた惨状も意に介さず、手を差し伸べた。

つい先刻...

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