第6章

礼奈視点

水曜日の朝、健一の勤めるオフィスビルに足を踏み入れるのは、自分が大失敗をやらかしたことを観客全員がすでに知っている舞台へと、足を踏み出すような心地だった。

五階でエレベーターの扉が開く。

通り過ぎる際、人々はちらりとこちらに視線を向けるが、すぐにまた目を逸らす。休憩室の近くでは、同僚たちが小さな塊を作って何やら話し込んでいたが、私が近づくのに気づいた瞬間、その声はひそひそ話へと変わった。

なんとか健一のデスクにたどり着き、椅子に座ってモニターのスリープを解除する。理解不能なプログラムコードを目で追うふりをしながらも、胃がキリキリと痛み、締め付けられるような感覚に襲わ...

ログインして続きを読む