第8章

礼奈視点

どうにか一週間を乗り切った。

土曜の朝、キッチンのテーブルに座り、健一が私の手を使ってボウルに卵を割り入れる様子を眺めながら、頭の中にはそのことしかなかった。自分の筋肉が覚えている動作が、目の前で繰り広げられるのを見るのは、なんとも奇妙な感覚だった。

お互いの身体で過ごした七日間。正直なところ、七年にも感じられた。

「お母さんから電話だ」健一は卵から目を離さずに言った。「今日、昼食に来いってさ」

胃がずしりと重くなった。「健一、もう忙しいって断ったほうが――」

「いや、行くよ」彼は振り返った。その瞳――私自身の瞳――には、決意の色が宿っていた。「これは俺がやらな...

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