第8章

早坂悠介視点

 悠介が彼女を探し始めてから、すでに三日が過ぎていた。

 スマホに保存した郁美の写真を見せながら、チューリッヒの街角を行き交う人々に声をかけ続ける。「この人を見たことはありませんか」。大半は首を横に振り、中には同情の眼差しを向ける者もいた。

 四日目。大学近くにあるカフェのバリスタから、ついに手がかりを掴んだ。

「ああ、見たことあるよ。通りの向こうにある建築事務所の同僚と、たまに来るんだ」

 悠介の心臓が早鐘を打つ。

「どこの会社だ?」

 バリスタに教わった住所へ向かい、ビルの外で数時間立ち尽くす。足は棒のように重く、寝不足で目も痛む。だが、そんなことはどうでもよ...

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