第9章

 悠介はスマートフォンの画面で明滅する不動産仲介業者の番号を睨み、通話ボタンをタップした。

「はい、早坂です。いかがなさいましたか」

「楓通りにあるあの家だ。昨年売却されたあの物件、俺が買い戻したい」

 受話器の向こうに沈黙が落ちた。

「……現在の所有者の方に連絡を取り、折り返しご連絡いたします」

 悠介は電話を切り、静かに待った。三日後、着信音が鳴った。

「早坂です。所有者様ですが、売却の意思はないとのことです」

「倍額払うと言ってくれ」

「金額の問題ではない、と仰っておりまして……」

 悠介は奥歯を噛み締めた。

「あの男の電話番号を教えろ」

「ご本人の許可なく、それ...

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