第9章

正直なところ、ストリップクラブの一件から二週間は、まるでハネムーン期間みたいだった。賢治がちゃんとコミュニケーションを取ろうとしてくれていたのだ。彼の「長いスピーチ」は相変わらず二文程度だったけれど、少なくとも、今では「仕事に行ってくる」とか「帰りは遅くなる」とか、自分から言ってくれるようになった。

一緒に料理までするようになった。まあ、私が料理して彼が皿洗い、という分担だったけど、それでも大きな進歩だ。

『もしかしたら、この偶然の結婚生活、案外うまくやっていけるかもしれない。ベガスで酔った勢いで決めたことは、実は人生で一番賢い選択だったのかも』なんて、本気で思い始めていた。

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