第10章

香織視点

暗闇の中、誰かがそっと私の名前を呼ぶ声が聞こえた。

「香織……香織……」

必死に目を開けようとすると、目に飛び込んできた白い光が眩しくて目を細める。ここは……病院?

「颯斗……」なんとか目を開けると、かすれた弱々しい声が出た。

「ここにいる、大丈夫だ」彼はすぐに身を乗り出し、心配そうな瞳で私を見つめた。「気分はどうだ?」

彼の顔を見た途端、恐ろしい記憶が一気に蘇ってきた。松本奈々の病的な微笑み、コーヒーの奇妙な苦い味、そしてどんどん重くなっていく私の瞼……。

「私……もうあなたに会えないかと思った」涙が止めどなく溢れてくる。「奈々ちゃんが……彼女が私を殺そうとし...

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