第2章

「こ、これは……」

私の声は震え、手から写真が滑り落ちそうになった。

彼は苦笑いを浮かべ、その声には優しさが滲んでいた。「香織。私は君の夫、森井颯斗だ。三ヶ月の長期出張から戻ったばかりなんだが、まさか最初の通報が自分たちの家だとは思わなかった」

はっ!?

頭の中で何かが爆発したような衝撃が走った。私は目を丸くして目の前にいるとんでもなくハンサムな警察官を見つめ、それから手の中の写真に視線を落とし、完全に呆然としてしまった。

この制服姿の超絶イケメンが……私の夫?

あのコミコンのパーティーで電撃結婚した相手?

「ご、ごめんなさい! 本当にごめんなさい!」顔が耳の先まで真っ赤になる。「あなたがそうだとは知らなくて……てっきり、どこかの……ああもう、私ったらなんてことを言っちゃったの!」

さっき、彼の鼻先を指差して変態呼ばわりしたことを思い出し、穴があったら入りたい気分だった。自分の夫を不審者と間違えるなんて!

私の反応を見て、彼は思わずといったふうに微笑んだ。その表情は、厳格な警察官の顔つきを、一瞬で柔らかな男性のものへと変えた。

「佐藤さんの勘違いが、大事になっちゃったみたいだな」と彼は温かい声で言った。「君の部屋から物音がするから、何か大変なことが起きてると思ったらしい」

そこで先ほどの効果音テストのことを思い出し、私の顔はさらに赤くなった。「あれは……その、仕事で……ゲームの音声で……」

「わかってる」彼は頷いた。「新しいゲームをデザインしてるんだろう?」

私は驚いて彼を見つめた。「どうしてそれを?」

「なぜなら……」彼は一歩近づき、低く深い声で言った。「君の仕事、ずっと追っていたからな。長期出張の時でも、休憩時間に君が手がけた新しいプロジェクトは全部チェックしてた」

その言葉は、まるで羽で心臓を撫でられたかのように、私の中に不思議なときめきを運んできた。

私は改めて目の前の男性を見た。広い肩幅、高い身長、深い眼差し、そして私がよからぬことを考えてしまいそうなほど完璧な顔立ち。

私、本当にこんなに素敵な警察官と結婚したの?

しかも、彼は私の仕事をずっと気にかけてくれていた? 長期出張の最中でも、私のことを考えてくれていた?

「じゃあ……」私は小声で尋ねた。「もう戻ってきたの? 長期出張は終わったの?」

「ああ」彼は頷く。「今日で終わりだ。勤務が終わったら家に帰って君を驚かせようと思ってたんだが、まさか……」

彼は再び苦笑いを浮かべて辺りを見回した。「まさか、最初の顔合わせがこんな状況になるとはな」

私は手の中の写真に目を落とし、何とも言えない複雑な気持ちになった。三ヶ月前のコミコンのパーティーの記憶はほとんど曖昧で――覚えているのは酔っ払っていた時の断片と、翌朝目覚めて自分が結婚していたという衝撃だけ。

でも今、写真の中で幸せそうに微笑む二人を見ていると、もしかしたら……もしかしたら、これは間違いじゃなかったのかもしれないと思い始めていた。

温かな黄色い廊下の光が、事件報告書をまとめ終えて帰ろうとする森井颯斗の高い背筋に影を落としていた。

私は玄関のドアのそばに立ち、先ほどの羞恥心からまだ心臓の鼓動が収まらないでいた。この人が……本当に私の夫?

「明日の仕事終わり、迎えに行くから一緒に帰ろう」森井颯斗が振り返り、その射抜くような視線が私を捉えた。「そろそろ、私たちの本当の結婚生活を始める時間だ」

え?

私の顔は一瞬で燃え上がり、しどろもどろになった。「け、結婚生活? 私たち……一緒に暮らすの?」

森井颯斗の唇がわずかに弧を描く。その優しい微笑みに、私の心臓が跳ねた。「三ヶ月も離れていたんだ。私たちの家に、私が帰る時が来たんだよ」

「でも、私何も……」私は必死に両手を振った。「お互いのこと、何も知らないのに!」

「なら、明日から知っていけばいい」

あまりにも簡単なことのように彼は言う。私は目を丸くして彼を見つめた。

森井颯斗がさらに一歩近づき、その長い指が優しく私の頬を撫でた。「香織、私たちは夫婦だ。三ヶ月も離れていたのは、もう十分だろう」

呼吸が乱れる。この声、この距離、この温もり……。

「わ、私、心の準備が……」

「時間はやる」森井颯斗はそっと言った。「でも、明日から一緒に暮らす。いいな?」

私は激しく頷いたかと思うと首を横に振り、また頷いた。「はい……いえ、待って、つまり……ああもう、頭がぐちゃぐちゃ!」

森井颯斗はくすくすと笑い、私の額に優しいキスを落とした。「ゆっくり休め。また明日な、香織」

彼は背を向けて去りかけたが、数歩進んでから振り返った。「ああ、それと。今度効果音をテストする時は、ドアと窓は閉めとけよ。佐藤さん、口が軽いからな」

そう言って、彼は私にウィンクをした――その仕草があまりにも魅力的で、私の心臓はまた一つ、大きく音を立てた。

ドアが閉まった後、私はそれに寄りかかり、高鳴る胸を押さえた。

手の中の写真を見て、さっき森井颯斗が言った言葉を思い出す――私の仕事をずっと追っていた、と。

「長期出張中に人の仕事ぶりを追う余裕があるなんて……」私は思わず呟いていた。「警察官ってみんなそんなに暇なのかしら?」

口に出した瞬間、自分の声の響きがおかしいことに気づいた。彼の言葉を疑うはずの口調が、まるで……拗ねているみたいに聞こえたのだ。

「でも、正直……」私は写真に目を落とし、無意識に声が柔らかくなる。「まさか彼が私の仕事に反対しないどころか、陰ながらずっと見守ってくれていたなんて、思ってもみなかった」

私が乙女ゲーム、特に成人向けコンテンツも作っていると聞けば、たいていの男性は不真面目だと思ったり、あれこれ反対意見を口にしたりした。でも彼は……。

どうこの状況を整理すればいいのかわからず、私は頭を振った。三ヶ月前の電撃結婚も大概あり得なかったのに、今になって突然現れた超絶イケメンの「夫」は、ついさっき私が変質者だと勘違いした相手だなんて……。

なんなの、この昼ドラみたいな展開は。

でも……あの制服姿、本当にすごく格好良かった。

待って! 本当に夫なら、私たち……ずっと一緒に住んでたんじゃないの?

先ほどの森井颯斗の言葉を思い出す。「明日の仕事終わり、迎えに行くから一緒に帰ろう」「そろそろ、私たちの本当の結婚生活を始める時間だ」……。

うそ、明日から同棲生活が始まっちゃう!

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