第3章

翌朝、私はネクサスゲームズの自分のデスクに座り、ぼんやりとパソコンのモニターを眺めていた。

昨日の午後の勘違いのせいで、一晩中寝返りを打ってばかりいたのだ。そのせいで頭は霧がかかったようで、まったく仕事に集中できない。

『ジャスティス&ラブ』の男性主人公のデザイン案は、三時間も前からモニターに表示されたまま――真っ白だった。

数本線を描いてみては、すべて消去する。また数本ストロークを加えては、また消去。

もう、どうして急に何も描けなくなっちゃったんだろう?

「香織!」

クリエイティブディレクターの茶谷咲良さんの声が、雷のように頭上で轟いた。私は飛び上がり、慌てて椅子に座り直す。

咲良さんはヒールをカツカツと鳴らしてやってくると、嵐の前の空のように険しい顔で言った。「デザイン案はどこ? 進捗を見せて」

私は申し訳なさそうに画面を指さした。「まだ……構想段階でして……」

「構想段階?」咲良さんはモニターに顔を近づけ、真っ白なキャンバスを見ると、その表情はさらに険しくなった。「香織、もう三日よ! 私に見せるのがこれ?」

周りの同僚たちがこちらをチラチラと盗み見している。顔がカッと熱くなるのを感じた。「茶谷さん、進捗が遅いのは分かっています。でも、どうしてもイメージが掴めなくて……」

「イメージが掴めない?」咲良さんの声が一段と高くなる。「あなたはうちの会社で一番才能のあるキャラクターデザイナーでしょう! あなたがデザインした女性キャラクターはどれも本当に素晴らしかったわ。『魔法少女年代記』シリーズなんて、うちの収益を三倍にしたのよ! それが今度は、男性主人公のデザインができないって言うの?」

私は机の下にでも潜り込みたい気持ちで、うつむいた。「でも……男性キャラクターのデザインは、女性キャラクターとは全く違って……」

「最近あなたがデザインした男性主人公を見なさい!」咲良さんは無慈悲に言葉を遮り、私の画面に表示されていたいくつかの没案を指さした。「魂がこもってない! ペラッペラじゃない! 男の色気が微塵も感じられないわ! プレイヤーが求めているのは、こういう血の通っていないテンプレートじゃなくて、胸がときめくような男性主人公なのよ!」

その一言一言が、針で心を刺されるようだった。私は涙をこらえようと唇を噛みしめる。

「香織、何が問題か分かる?」咲良さんは私の隣に座り、少しだけ口調を和らげた。「あなたの最近の作品には、リアリティと感情の深みが欠けているの。デザイナーとして、人の心に響くキャラクターを生み出すには、本物の感情体験が必要よ」

「一生懸命、頑張ってはいるんです……」私は小声で言った。

「頑張る方向が間違ってるのよ!」咲良さんは、突然バンッと机を叩いた。「あなたには、本物の男性の魅力に対する理解が足りない!」

私は戸惑いながら彼女を見上げた。「どういう意味ですか?」

「恋をしなさい!」咲良さんは、そうきっぱりと言い放った。「本物の男性の魅力を体験して、胸をときめかせて、その本物の感情をデザインに注ぎ込むのよ!」

私は目を丸くした。「恋、ですか?」

「さもなければ、あなたは女の子たちが絶叫するような男性主人公なんて、一生描けないわよ!」咲良さんは立ち上がった。「24時間あげる。それでも進展がなければ、このプロジェクトは他の人に任せるしかないわ」

彼女はヒールを鳴らして去っていき、私は一人、呆然とデスクに座り尽くしていた。

恋をする? 私、もう結婚してるのに! 他の男性と……その、大人の会話をするなんて? そんなの、ふさわしくない……私は既婚者なのに……。そう思うと、思わず頬が赤らみ、笑みがこぼれた。

ふと、昨夜の森井颯斗の姿が脳裏をよぎった――あのパリッとした警察の制服、ありえないほど整った顔立ち、そしてあの深く、強い眼差し……。

待って!

私の目は、瞬時に輝いた。

咲良さんは本物の男性の魅力を体験しろって言ったけど――森井颯斗こそ、その完璧な見本じゃない?

本物の警察官で、あんなにイケメンで……。これって、最高の参考資料になるんじゃない?

私は定時が待ちきれなかった。大急ぎで荷物をまとめ、様々な可能性を頭の中で巡らせながら、家路を急いだ。

そうよ! どうして今まで気づかなかったんだろう? 私には超絶イケメンの警察官の夫がいるじゃない――わざわざ他所で男の魅力の参考を探す必要なんて、どこにもなかったんだ!

玄関のドアを勢いよく開けると、私は自分の持ち物をかき回し、新品のノートを一冊見つけ出した。そして表紙に丁寧にこう書き込んだ。

『森井颯斗の観察と資料収集計画』

最初のページを開き、観察のポイントを書き出し始めると、私の頭の中には無意識に森井颯斗の姿が浮かんでくる。

制服の魅力……。昨夜、あのパリッとした警察の制服を着た彼の姿を思い出す――広い肩が制服のシルエットを際立たせ、帽子の警察徽章が光の下でキラリと輝いていた。ああ、あの規律正しさの中にも垣間見えるハンサムな存在感は、まさに磁石のようだった!

体のプロポーション……。彼のまっすぐな立ち姿を思い浮かべた途端、顔がカッと熱くなった――あの完璧な肩と腰の比率、腕の筋肉の輪郭……。

待って、何を考えてるの! これは仕事のため! 純粋に仕事のためなんだから!

表情……。彼が厳しい警察官から優しい夫へと変わる瞬間を思い出す。あのギャップは、まさに破壊的だった。それに、あのウインクの仕草……また心臓がドキドキしてきた。

性格……。「私たちは夫婦なんだから」と、あの優しくも断固とした口調で言ったことや、私の仕事をいつも気遣ってくれること……。

私は頭を振って、落ち着こうと努めた。これは真面目な資料収集ミッションなのよ! 個人的な感情を挟んではいけない!

私は急いでノートにキーワードを書き留めた。制服、体格、表情、性格……。そして、顔が燃えそうになるのを感じながら、パタンとノートを閉じた。

書き終えた後、私は満足気にペンを置き、鏡に向かってガッツポーズをした。

「完璧!」私は自分に呟いた。「彼を間近で観察して、第一級の男性の魅力に関するデータを集めれば、最高にリアルで魅力的なゲームキャラクターをデザインできるわ!」

そう思った瞬間、私はもう一つの重要な点に気づいた――

今夜、森井颯斗が私を迎えに来て、私たちの同居生活が始まるのだ!

顔を真っ赤にしながらノートを抱きしめ、ベッドの上でゴロゴロと転がった。

「なんてこと、これはまさに天の助けだわ!」私の声は興奮で震えていた。「一緒に住むってことは、二十四時間、彼を近距離で観察できるってことじゃない!」

しかし、すぐに新たな心配事が頭に浮かんだ。「でも……どうやってバレずに観察を続けられるんだろう? 彼に、私がおかしいって思われないかな?」

私は起き上がり、この技術的な課題について真剣に考え始めた。

だめ、これは真面目な仕事の任務――極秘にしておかなければ!

私はノートの最後のページをめくり、厳粛に書き記した。

「トップシークレットミッション 彼の妻であるという隠れ蓑のもと、二十四時間の近距離観察を実施し、第一級の男性の魅力に関するデータを収集、『ジャスティス&ラブ』の男性主人公デザインのためのリアルな資料を提供する。

ミッション目標 世の中の女の子を夢中にさせる完璧な男性主人公をデザインすること。

ミッションコードネーム 夫観察作戦!」

これを書き終えた後、私はノートをスーツケースの一番奥深くに慎重に隠し、荷造りを始めた。

森井颯斗と一緒に住むのだから、必需品は全部持っていかなければならない。そして何より、これから始まる「観察ミッション」の準備をしなければ。

服を畳みながら、私は密かに計画を練った。彼の家で最適な観察ポジションを見つけ、彼の日常の習慣を記録し、彼の一挙手一投足、表情のすべてを分析する……。

時計が六時半を指した。

森井颯斗は仕事が終わったら迎えに来ると言っていた――もうすぐ来るはずだ。

荷造りを終えたスーツケースを見て、私は深呼吸をした。

今日から、私はプロの「夫観察官」なのだ!

仕事のため、『ジャスティス&ラブ』の成功のため、私はこの観察ミッションを完遂しなければならない!

ドアのチャイムが鳴った瞬間、私の心臓は止まりそうになった。

枕の下に隠したノートを握りしめ、私は自分に最後の気合いを入れた。

「行くのよ、香織! あなたはプロのゲームデザイナー! これはただの特別な資料収集任務なんだから!」

そして、私は深く息を吸い、髪を整え、ドアに向かって歩き出した。

夫観察作戦、正式に開始!

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