第8章

「松本?」私は凍りついた。「うちの会社の新人デザイナーの、松本奈々ちゃんのこと?」

颯斗の顔が、険しく翳る。「香織、あいつはあんたの会社の新入りってだけじゃない。警察署で働いてた、私の元同僚だ」

えっ?!

頭の中で何かが弾けた。私に企画のアドバイスを求めてきた、あの可愛らしくて純粋そうに見えた子が、実は颯斗の元同僚だったなんて。

「そん……な……、どうして……?」私の声は震えていた。「だって、あの子、まるで新卒みたいだったし、それに刑事Fの企画のインスピレーションについて聞いてきて……」

「くそっ!」颯斗は椅子から勢いよく立ち上がった。固く握りしめられた拳が、ミシリと音を立て...

ログインして続きを読む