第9章

逃げ出したいのに、突然、激しいめまいに襲われた。視界がぼやけ始め、足は鉛のように重い。

「コーヒーに……何を淹れたの?」私は恐怖に震えながら松本奈々を見つめた。

「あなたを大人しくさせるには十分なくらい、かしらね」松本奈々は勝ち誇ったように微笑んだ。「すぐに意識を失って、そして……永遠に消えるのよ」

必死に携帯を取り出して助けを呼ぼうとするが、指が言うことを聞かない。「颯斗さんが……私を見つけてくれる……」

「颯斗?」彼女は冷たく鼻で笑った。「彼があなたの失踪に気づく頃には、全部終わってるわ。面倒なあなたを始末してくれたって、感謝されるはずよ」

周りの景色がぐるぐると回り始め...

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