第36章 梯子を外す

千葉晴美の目に異様な感情が一瞬よぎった。前回の木村孝実の件は、古宮桐也が面子を保つために仕方なく彼女を助けてくれたのだと思っていた。だが今回は自宅で、しかも彼が一番可愛がっている妹の前で——こんなことをする必要など全くなかったはずだ。

それに幼い頃から、彼女はこの世に頼れるものなど何もないと思ってきた。

あるとすれば、それは自分だけ。なのに突然、目の前に現れた人が自分を守ってくれる——一瞬、心が追いつかなかった。

でも彼女は古宮桐也にそうしてほしくなかった。人間は依存しやすいもの。もし彼がずっとこうして、ある日突然変わって、もう守ってくれなくなったら、きっと生きる気力さえ失って...

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