第37章 互いに利用する

「前回のことは、やむを得ない手段だっただけよ。自分を守るための方法だっただけ」本当に私のダンナだと思ってたの?

古宮桐也はその言葉を聞いて、彼女とじっくり話し合う必要があると感じた。

「つまり、前回はただ利用しただけってことか?」

「古宮家だって私を利用してるんじゃないの?」所詮は利益のためだけのこと。お互い心の中で分かっていればいい。わざわざ口に出す必要なんてない。

「じゃあ、もし俺が、演技じゃなく本当に、お前を俺の本物の妻にしたいと言ったら?」

古宮桐也は少し顔を上げた。かすかなタバコの香りが、外から漂う淡い桃の香りと混ざり合う。照明が彼の姿を照らし、金色の輪郭を浮...

ログインして続きを読む