第100章 慈母と孝子

西園寺琴音は淡々と頷くだけだった。その様子を見て、看護師は努めて明るい声を出した。

「さっき入ってくる時、お隣の病室の前を通ったんですけど、すごく素敵な雰囲気でしたよ。旦那様は背が高くてイケメンだし、二人のお子さんたちも可愛くて良い子で。ずっとお母様のことを気遣ってて……本当に幸せそうな四人家族で、見ていて羨ましくなっちゃいました」

看護師の言葉は、悪気のない純粋な感想だった。ただ場の空気を和ませようとしただけなのだ。

その言葉を聞いた瞬間、キーボードを叩いていた西園寺琴音の指が、ピタリと止まった。

四人家族?

奥様?

お母様?

彼女の口元に、思わず自嘲の笑みが浮かぶ。

事情...

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