第106章 調査

母が振り返った。その顔は、記憶にある通り、どこまでも優しかった。

唇が動く。その声は、まるで遥か彼方から響いてくるようだった。

「琴音、来ちゃだめ! 逃げて!」

「ちゃんと生きて。過去のことに囚われないで」

「自分を……自分を一番に守るのよ……」

雨に打たれた母の姿が滲み、今にも消え入りそうに揺らぐ。

「嫌! 行かないで、お母さん!」

西園寺琴音は泣き叫び、母を捕まえようと手を伸ばした。

「またあいつらが来たの? あの資本家たちが……お母さんを陥れたあの人たちが?」

声を枯らして問いかける。十数年もの間、彼女を苦しめ続けてきた問いの答えを求めて。

だが、夢の中の母は答えず...

ログインして続きを読む