第108章 お前を信じる

西園寺琴音は、自分が意識の闇の中でどれほどの時間を彷徨っていたのかわからなかった。

ひやりとした冷たい感触と、嘔吐感を催すような鉄錆の臭いが鼻をつく。

長い睫毛が震え、泥のような暗闇から意識が徐々に浮上していく。

激しい眩暈の余韻がまだ残っており、四肢は鉛を流し込まれたかのように重い。

彼女は重い瞼をこじ開け、焦点を合わせようとした。

視界に入ってきたのは、先ほどと同じ人影のない湖畔の林だった。

ただ、陽光の角度が変わっている。すでに午後に差し掛かっているようだ。

そして、彼女は自分の手を見た。

彼女の右手が、一本の果物ナイフを固く握りしめている。

刃渡りは短いが異常に鋭利...

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