第86章 動かぬ証拠

暗闇の中、その人影の動きは酷く手慣れていた。

実験室の配置を熟知しているらしく、並んだ実験台を巧みに避け、迷うことなく西園寺琴音のデスクへと向かう。

西園寺琴音は息を殺し、保管庫のドアの隙間からその様子を凝視していた。

黒い影がパソコンの前で立ち止まる。ポケットから小さなUSBメモリを取り出し、ポートに差し込もうと身を屈めた、その瞬間だ。

今だ!

西園寺琴音は大きく息を吸い込むと、勢いよく保管庫のドアを押し開け、同時に壁のスイッチを叩いた。

瞬時に灯った照明が実験室を、そしてパソコンの前で硬直する背中を白日の下に晒す。

やはり、富山室長だ!

男は突如響いた物音に飛び上がるほど...

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