第90章 もう彼女には関係ない

離婚し、他人となった今、こうして彼女の姿を再び目にすると、陸奥司の胸の奥には極めて複雑な感情が渦巻いた。

自分でも意外なことに、それは……名状しがたい未練のような渇望だった。

彼はあふれ出しそうな思緒を隠すように瞼を閉じ、依然として衰弱しきった様を装いながら、掠れた声で応じた。

「ああ。すまない」

西園寺琴音は解熱剤を見つけ出し、キッチンでぬるま湯を汲んでくると、彼がそれを飲み干すのを見届けた。

その間、二人の間に余計な会話はなかった。

だが、先ほどまでの剣呑で張り詰めた空気は、幾分和らいでいた。

薬を飲み終えたのを確認すると、琴音は姿勢を正し、窓の外の夜色に目をやった。それか...

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