第5章

 まるで、あのレストランでの一瞬のように。

 お見合い相手を間違えるという失態に、恥ずかしさで逃げ出したくなった私を、黒沢大和は「せっかく来たんだ、話でもしていけばいい」と引き留めた。私は何かに導かれるように、その席に戻った。

 その夜、私たちは六本木のフレンチレストランで朝まで語り明かした。

 話題は驚くほど弾んだ。高校の裏門にあった、いつも肉を多めにしてくれる弁当屋の話から、帝都大学医学部の実習中にブラックコーヒーを三杯飲まないと持たなかった彼の話、そして髪が抜けるほど残業させられる私の広告代理店の話まで。

 閉店時間になり、店を出る間際、彼はスマホを取り出した。

「連絡先、交...

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