第72章 彼女が望むなら、私が持つ限り

九条時夜を敵に回すということは、一歩間違えれば破滅を意味する。

秋月雫は、如月海にこれ以上の負担を強いるわけにはいかなかった。

「三十分だ。時間は足りるか?」

彼は雫の遠慮など意に介さず、的確な時間だけを提示した。

「ええ、大丈夫」

時間を決めると、秋月雫はノートパソコンを片付け、少し考えを巡らせてから階下へと降りた。

予想通り、田中の姿は屋敷内になく、庭へ出るのは容易だった。

ただ、正門にはボディーガードがいる。彼女は庭師用の梯子を持ち出し、塀を乗り越えることにした。

別荘の外に立ち尽くすと、まるで隔世の感を覚えた。

今回ばかりは、もう二度と戻ることはないだ...

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