第73章 戻って花嫁のご機嫌取り

九条時夜は、如月海と秋月雫が食事をしている写真を初めて目にした瞬間から、気づいていた。

如月の瞳の奥に、澱のように溜まった濃密で、日の目を見ない情念が潜んでいることを。

あの頃の如月海は、何らかの事情でその想いを押し殺していたのだろう。

それが今や、俺の目の前で「彼女を妻にする」だと?

九条時夜は怒りのあまり、乾いた笑いを漏らした。

「あの時、彼女は休学してまでお前との結婚を拒んだんだ。今さらお前を選ぶはずがないだろう」

過去を持ち出され、如月海の表情にわずかな陰りが差す。

当時、如月教授は秋月雫を引き留めるためだけでなく、二人の仲を取り持とうとしていた。如月海自身...

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