第92章 退くも悔しく、進むも道なし

その一言が、九条製薬と薬学研究所が積み上げてきた数ヶ月の努力を、一瞬にして打ち砕いた。

九条時夜の右手が固く握りしめられ、その手背には青筋が浮き上がっていた。

彼の怒りの矛先は、数ヶ月の労苦が徒労に終わったことではない。薬の成分に問題があれば、回収するのは当然の理だ。

彼が真に許せなかったのは――。

一年前、すでに秋月雫が「竜英草」の依存性を知っていたという事実だ。九条製薬が『レスタス』を大々的に売り出そうとしていたことを知りながら、彼女は一言も、ただの一文字さえも、彼に忠告しようとしなかった。

九条時夜の隣に座る白川ゆらもまた、彼の静かなる激昂を感じ取っていた。

彼...

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