第87章 いいですか?

九条時夜は通話ボタンを押し、耳に当てた。彼が口を開くよりも早く、成田の怒鳴り声が響いてくる。

「何やってんだよ。なぜ白川ゆらの電話に出ない? 変質者に絡まれて怪我したんだぞ!」

秋月雫の心臓が、ぎゅっと締め付けられた。

たとえ九条時夜が白川ゆらの電話に出なくても、彼の周囲の人間がこうして情報を運んでくるのだ。

では、自分はどうだろう?

以前、九条おばあ様が倒れた時、彼女は彼の電話に繋がらず、メッセージを送るしかなかった。

もし、自分が何かあったとしたら?

彼はきっと、見向きもしないだろう。

目元と眉間に自嘲の色を滲ませ、彼女は静かに、しかし冷ややかに告げた。

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