第98章 そんなに彼を愛しているのか?

秋月雫はベッドのヘッドボードに力なくもたれかかっていた。その顔色は、血の気が引いて透き通るほど蒼白だ。

 脳裏を支配しているのは、九条時夜が自分を突き飛ばした、あの一瞬の光景だけだった。

 心が、完全にかき乱されていた。

 あれほど固く決意していた離婚の意志が、その瞬間に音を立てて崩れ去ってしまったのだ。

 今の彼女が望むのは、ただ彼が回復することだけ。そのためなら、どんな代償を払っても構わなかった。

「如月海……」

 彼女の声は酷く掠れていた。言葉を続けようとしたその時、スマートフォンの着信音が会話を遮った。

 なぜだろう。その電子音が鳴り響いた瞬間、心臓が大きく跳ねた気がし...

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