第3章
絵里視点
考えつく限りの方法で出口を探したけれど、脱出は叶わなかった。疲労が潮のように押し寄せ、冷たい金属のドアに寄りかかるようにして崩れ落ち、すぐに夢の中へと落ちていった。
夢の中では、またあの雪の夜だった。
悟と私は、暗闇の中を必死に走っていた。雪片が剃刀の刃のように顔を打ちつけ、後ろからは追っ手の足音と怒声が聞こえ、前には果てしない闇が広がるばかりだった。
「走れ、絵里!」悟は私の手を固く握った。「止まっちゃだめだ!」
夢の中の悟はまだ十五歳で、今よりもずっと痩せていたけれど、その手は変わらず温かくて力強かった。私はまだ十二歳で、小さな体は雪の夜に震えていた。
「もう走れないよ……」私は喘ぎ、足がもつれ始めた。
「だめだ、もっと遠くまで逃げないと!」悟はちらりと後ろを振り返り、その目に恐怖を閃かせると、さらに強く私を引いた。「信じて。もっと遠くまで行けば、もう誰にも見つからないから」
私たちはいくつもの野原を駆け抜けた。足元の雪はどんどん深くなっていく。靴はずっと前にぐしょ濡れになり、足の感覚は冷たさで麻痺していたけれど、悟の手が私に走り続ける力をくれた。
場面は不意に、もっと昔の記憶の断片へと切り替わった。
養護施設にやってきたばかりの、内気で引っ込み思案だった悟の姿が見えた。いつも私の後ろに黙って立っては、その細い体で養父母の怒りから私をかばってくれた。こっそりと自分の食べ物を分けてくれたこと。私が病気で寝込んだ夜、一晩中そばで看病してくれたこと。
あの物静かで内向的な少年は、その瞳にいつも私を守ろうとする光を宿していた。
「絵里、何があっても、俺がお前を守るから」降りしきる雪の中、悟は私に言った。「ずっと、ずっとだ。誰にもお前を傷つけさせたりしない」
だが突然、夢はねじれ、変質し始めた。雪の夜は炎の海へと変わり、悟の顔がぼやけて、別の顔に取って代わられた。
炎の光の中に、和也が現れた。その笑みは邪悪で冷たかった。「どこへ逃げられると思ってるんだい?」
「いや!」私は必死にもがいたが、和也の手が鉄の万力のように私を掴んだ。「悟! 助けて!」
「悟はもうお前を助けられないよ」和也はガソリン缶を手に、せせら笑った。「誰も助けられない。今度こそ、お前は完全に消えるんだ――灰すら残らないさ」
炎が突如として燃え上がり、私は燃え盛る車の中に閉じ込められ、和也は外から、私が炎に飲み込まれていくのを冷ややかに見つめていた……
「いや! 助けて! 悟!」――私は絶叫して目を覚ました。
「絵里! 絵里! 目を覚ませ!」悟の心配そうな声が耳に響いた。
はっと目を開けると、冷や汗でびっしょりになっていて、心臓が激しく脈打っていた。小さな窓から月明かりがベッドに差し込み、悟の不安げな顔に柔らかな影を落としている。
だが、私が衝撃を受けたのは、自分の状況が少々……特殊であることだった。
私の両手首は柔らかい革の拘束具で優しく固定されていたが、内側には厚いクッションが当てられており、痛みは全くない。足首も同様の処置を受けていた。
「悪夢を見ていたぞ。『燃やさないで』とか、『和也』とか、俺の名前も呼んでいた」悟は私の湿った額を優しく拭い、その声は気遣いに満ちていた。「ひどい汗だ。どんな夢を見ていたんだ?」
私は呼吸を整え、気持ちを落ち着かせようと努めた。
「また、あの夢……」私はつぶやいた。「悟、私のために、たくさん辛い思いをしてきたんだね」
「どんな夢だ?」悟はベッドの縁に腰掛け、私の髪を撫でた。「話してごらん」
私は彼を見つめた――私を守るために、こんな方法で私を拘束することを選んだこの人を。子供の頃と同じように、彼はいつも彼なりのやり方で私を守ってくれる……たとえその方法が、狂気じみて見えたとしても。
「子供の頃の夢を見たの。雪の中を走る私たちの、あなたが私の手を引いて、何があっても守るって言ってくれた。それから場面が急に変わって――和也が現れて、私を燃える車に閉じ込めたの……」
悟の顔が瞬時に険しくなり、その目に危険な光が閃いた。だが彼はすぐに感情を抑え込み、声は穏やかなままだった。「ただの夢だ、絵里。俺が誰にもお前を傷つけさせたりしない」
「悟、この拘束具は……」私は手首のか細い枷に目をやった。
悟の目に、一瞬パニックの色がよぎった。「すまない、絵里。傷つけるつもりはなかったんだ。ただ……ただ、もう二度とお前を失うわけにはいかないんだ」
私はこの「拘束具」を注意深く観察した。革は最高級のイタリア輸入品で、手縫いのステッチは完璧だった。クッション材は医療用の低反発フォームで、裏地はシルク――滑らかで肌触りが良い。バックルは精密加工されたチタン合金で――頑丈かつ軽量だった。
これは、その場の思いつきで作られたものではない。
「いつこれを作ったの?」私は革の表面をなぞった。
「ずいぶん前だ」悟は顔を赤らめた。「お前が和也と付き合い始めてからずっと。もしお前が危険な目に遭ったら、どうやって守ろうかって、そればかり考えてた」
普通の状況なら、どんな女性でもパニックになって叫び出すだろう。でも、私はそうしなかった。むしろ、悟の深い愛情を感じていた。
この、一見すると冷たい男が、私を守るためにこれほどまでに心を砕いていたのだ。
「悟……」私は意図的に彼の視線をとらえた。かつては恐れていたけれど、今は渇望している深い愛情がそこにあった。
「なんだ?」彼は緊張したように尋ねた。
言葉を発する代わりに、私はゆっくりと顔を上げ、彼にキスをした。
悟は瞬時に体を硬直させ、呼吸さえ止まった。
数秒後、彼は慎重に私のキスに応えた。その唇は温かく、ミントの香りがかすかにして、わずかに震えていた。
これが、私たちの初めての本当のキスだった。子供の頃の無邪気な愛情ではなく、大人の深い感情の表現。
「絵里……」彼は息を切らし、震える声で私を見た。「お前……俺のこと、嫌いじゃないのか? 俺が狂ってるって、思わないのか?」
「今度はあなたを信じることにしたの、私たちを信じるって」私は真剣に彼の目を見つめた。「もう誰にも、私たちを引き離させたりしない。私自身にさえも」
悟の目に信じられないという光が閃き、それから彼は私を強く抱きしめた。
「絵里、愛してる」彼は私の耳元で震える声でささやいた。「子供の頃からずっと愛してた。今も、これからもずっと」
「私も愛してる、悟」私は彼を抱きしめ返した。「あなたのすべてを愛してる。その独占欲も含めて」
夜明けの光が、小さな窓から部屋に差し込んできた。悟と私はベッドの縁に腰掛け、抱き合っていた。雰囲気は以前よりもずっと温かいものになっていた。
悟はゆっくりと私の手首と足首から拘束具を外した。その動きは相変わらず優しい。彼は私の肌を注意深く調べ、赤い痕や傷がないことを確かめた。
「悟、話さなきゃいけないことがあるの」私は彼の手を取った。「私の夢は、ただの夢じゃない、あまりにもリアルで、まるで実際に起きたことみたい」
悟の表情が真剣なものに変わった。「どういうことだ……」
「和也が私を殺そうとしている夢を見たの」私はまっすぐに彼の目を見つめた。「事故じゃない!計画的な殺人よ。彼は私の保険金が目的なの、悟。夢の中で、彼は私に薬を飲ませて、それから車に火をつけた」
悟の手が拳を握りしめた。「クソッ! あの野郎が厄介なことになるとは思ってたんだ!」
「だから、彼に近づく必要があるの」私は続けた。「悟、この脅威を完全に排除するために、証拠を集めなきゃ。もし私から動かなければ、私たちはいつまでも守りに徹することになる」
「危険すぎる」悟は私を強く抱きしめた。「お前が危険に足を踏み入れるのを見ていられない。もしあいつが本気でお前を傷つけようとしたら……」
「それこそが、彼の正体を暴く絶好のチャンスよ」私はきっぱりと言った。「悟、あなたの保護の下にずっと隠れているわけにはいかない。もし和也が本当に私を傷つけたいなら、いつか必ず機会を見つけるわ。受け身で待つより、こっちから攻めましょう」
悟の表情は葛藤に揺れていた。「計画は?」
「予定通り、彼と旅行に行くわ。でも、彼の犯罪の証拠を集めるために録音機材を持っていく」私は悟の手を握りしめた。「その間、あなたには陰から私を守ってほしいの。十分な証拠が集まったら、すぐに警察を呼ぶ」
「もし、あいつが本気でお前を傷つけようとしたら?」
「その時こそ、すべてを終わらせるチャンスよ」私は真剣に彼を見つめた。「悟、私を信じて。攻めに転じなきゃ、守り続けているだけじゃだめなの」
悟は長い間黙り込み、心の中で葛藤していた。やがて、彼はゆっくりと頷いた。
「もうお前を閉じ込めるのはやめる。だが、お前の居場所は常に俺に知らせること」彼の口調は、一切の反論を許さなかった。「そして約束しろ!危険を感じた瞬間に、すぐに俺に連絡すると」
「約束するわ」私は彼の手を固く握り返した。







