第4章

絵里視点

その後数日間、私は和也の傍に戻り、この危険な見せかけの恋人関係を続けなければならなかった。悟は私にいくつかの超小型録音機を渡してくれた。口紅、ペン、腕時計――どれも一見すると日用品にしか見えない、美術品のように精巧な作りだった。

「いいかい、このボタンを押すと録音が始まる」悟は辛抱強く操作方法を教えてくれた。「もし緊急事態になったら、メモリーカードを隠すんだ」

私は頷き、一つ一つの詳細を頭に叩き込んだ。心臓が激しく脈打つ。『いよいよ、反撃の時だ』

水曜の夜、和也は私をアメフト部の祝勝会に誘った。O大の学生会館は煌々と明かりが灯され、鼓膜が痛くなるほどの大音量で音楽が鳴...

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