第5章

絵里視点

土曜の朝、きっかり十時。和也の白いトヨタが寮の建物の下に現れ、その車体は太陽の光を眩しく反射していた。

私は深呼吸をする。胸の上に石が乗っているかのような圧迫感があった。

『今日がその時。今日、私がこれを終わらせるか、それとも……』それ以上考えるのは怖かった。

「よう、絵里。俺たちのロマンチックな旅行、準備は万端かい?」和也は運転席のドアを開け、私のために助手席のドアを開けに回り込みながら微笑んだ。

『かつては胸をときめかせたその顔が――今は吐き気を催させる』

「もちろんよ。待ちきれないわ」私は吐き気がするほど甘ったるい笑みを無理やり浮かべ、わざと彼の頬にキスをした...

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