第7章
由紀菜視点
二年後。トルコ、イスタンブール。
ロンドンでのプロジェクトを予定より早く完遂し、業界内で高い評価を得た私は、長年の夢であった歴史的建造物群の耐震改修プロジェクトに参加していた。
その日、私が図面のチェックをしていると、アシスタントが歩み寄ってきた。
「文室さん、投資家の方がお会いしたいと。お知り合いだそうです」
「アポを取ってもらって」私は顔も上げずに答える。
「名木田、とおっしゃっています」
持っていたペンの手が止まる。
ゆっくりと顔を上げると、入り口に佇む男の姿が目に入った。
名木田亮介。
彼は二年前よりずっとやつれて見えた。目尻には小皺が刻...
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