第3章

深夜、ホテルのベッドに横たわりながら、松山健一と私の間にあったすべての出来事で、まだ高揚感に包まれていた。

雨は一向にやむ気配がなく、壁越しに青村翔太と橋田美結が口論しているのが聞こえる――どうやら私たちのささやかなパフォーマンスが、二人の間にいざこざを引き起こしたらしい。

嵐の音を切り裂いて、松山健一の携帯が鳴った。彼は二コール目で応答し、その声は瞬時に鋭くなった。

「スィ……クアンド?」彼の言葉が、緊張をはらんで矢継ぎ早に飛び出した。「二十分でそっちへ行く」

彼はすでに服に手を伸ばしていた。

「どうしたの?」私は不安になって、体を起こした。

「ドライバーの一人に緊急事態だ。南町での夜間練習中に事故があった」彼の動きには無駄がなく、統制がとれている。「行かなければ」

「深刻なの?」

「かなりな」彼は一旦動きを止め、薄明かりの中で私を見た。「ここに一人でいても大丈夫か?」

私は頷いたが、胃のあたりに冷たいものが広がっていくのを感じていた。「もちろん。行って」

彼は身を屈め、私の額にキスをした――そのあまりに優しい仕草に、胸が締め付けられるようだった。「電話する」

そして彼は行ってしまった。雨音と、隣室から微かに聞こえる声だけが私と共に残された。

その後、眠ることはできなかった。アドレナリンが薄れていくにつれて、右脚にいつもの疼きを感じ始めた――嵐のせいで、一晩中それが悪化していたのだ。

朝になる頃には、痛みは無視できないほどになっていた。

ホテルの部屋に座り、ズキズキと痛む脚をマッサージしながら、私は三年前、佐藤先生がすべてを変えてしまう知らせを告げたあの日のことを思い出さずにはいられなかった。

「残念ながら、期待していたような知らせではありません、三浦さん」彼の声は慎重で、言葉を選んでいた。「右脚の損傷が……我々が当初考えていたよりも広範囲に及んでいます」

胃がすとんと落ちた。「それって、具体的にはどういうことですか?」

「プロのレースが要求するような高負荷には、もう二度と耐えられないということです。Gフォース、高速走行中の絶え間ない圧力……」彼は首を振った。「申し訳ありません」

その言葉は、物理的な一撃のように私を打ちのめした。私はレントゲン写真を見つめた。私が戦い抜いてきたすべての終焉を告げる、醜い白い骨折線がそこにはあった。

「テスト走行の仕事ならどうですか?」私の声は、意図したよりもか細く出た。「それならまだできますか?」

「軽い練習走行なら、問題ないかもしれません。しかし、本番並みのスピードでの走行は、私としてはお勧めできません。」

あの会話から三年、私はこの一筋の希望に必死でしがみついてきた。テスト走行の仕事。それはレースではなかったけれど、少なくとも私をサーキットに繋ぎとめてくれるものだった。

松山健一からのテキストメッセージで携帯が震えた。「リハビリ用の機材、必要な時に使えるよう手配済み。無理するな」

南町へ向かう前に、どういうわけか手配してくれていたのだ。いつも先を読み、いつも細部まで気を配ってくれる。

「どうしてこう、気が利きすぎるんだろう」その問いに、まだ向き合う準備のできていない感情で胸が締め付けられた。

私は手早く荷物をまとめ、外でまだ雨が降り続いているにもかかわらずチェックアウトした。ホテルの駐車場で車に乗り込み、次に何をすべきか考えようとした。その時、先日聞いた青村翔太の言葉が記憶の中で響き始めた。

金の話だった。三百万?いや、待って――三千万円。

私が受賞したとされる、何かの賞金。

手が震えるのを抑えながら携帯を取り出し、三年前の橋田美結との古いメッセージを遡ってスクロールした。

「美結、ちょっと質問。あなたが申請を手伝ってくれたテスト走行の賞のことなんだけど。あれって、どこの団体が主催だっけ?」

「何の話?私が賞の申請を手伝ったことなんてないけど。いつのこと?」

「年間最優秀レーサー賞よ。三千万円の。先月、美結が私の申請書を提出してくれたって言ってたじゃない」

「理恵、そんな賞はないわよ。何の話かさっぱりわからない」

「でも……あなたが言ったじゃない……」

「事故の後で、ストレスが溜まってるんじゃない?」

古いメッセージを読みながら、血の気が引いた。橋田美結は三年前にも否定していたのだ。しかし誰かが、私が三千万円を獲得したのだと信じ込ませた。あの頃、事故にあったばかりで、どんな良いニュースにでもすがりたかった私は、彼女の否定を無視することを選んだ。それを信じる必要があったのだ。

すぐに一郎さんに電話をかけた。「一郎さん、三千万円の最優秀レーサー賞なんてある?」

「理恵ちゃん、そんなのないよ。レーサーの賞で一番大きいのでも、せいぜい五百万だ。三千万円なんてどこで聞いたんだい?」

「なんでもない」

「私、三年間もクソみたいな嘘を信じて生きてきたんだ」

青村翔太は真実を言っていた。誰かが私にその金を渡したんだ、そしてそれは賞金なんかじゃなかった。

私は呆然としたまま家まで車を走らせた。アパートの敷地に入る頃には、雨は霧雨に変わっていた。

鍵をごそごそと探していると、背後から足音が聞こえた。

「理恵!」

振り返ると、マネージャーの由美が手作りの焼き菓子らしきものが入った袋を手に、駐車場を急いで横切ってくるのが見えた。

「由美?どうしてここに?」

「今日サーキットであったこと、聞いたのよ」彼女は少し息を切らしながら言った。「知っておくべきだと思って。特に、みんながその話で持ちきりだから」

彼女は私について建物の入り口へ向かってきた。「それに、差し入れも持ってきたわ。きっと必要になるから」

「サーキットで何があったの?」

彼女の目は、重要なニュースを伝える者の切迫感で輝いた。「午後のセッションの後、翔太と美結がものすごい大喧嘩したのよ。みんなに聞こえるくらい」

彼女は身を乗り出した。「誰かがあなたの婚約発表のことを口にしたら、翔太がキレちゃって。あなたが嘘をついてるとか、三年前のあの示談金の件があった後で、誰も理恵と本気で結婚したがるわけないとか、喚き散らし始めたの」

「美結は?」

「『理恵への執着はもういい加減にして』って言ってたわ。みんなの前でよ」由美は首を振った。「正直、婚約を発表したかと思えば、次の日には元カノの話ばっかり。美結だって、もうウンザリしてるのよ」

胃が締め付けられた。「みんな、彼が執着してると思ってるの?」

「まあね。ねえ、理恵、彼と話してみたら?彼がそんな風にいきり立ってるうちに、あのお金の件をはっきりさせちゃえばいいのよ」

どこからともなく現れたらしい、あのお金。

「そうね」私はゆっくりと言った。「彼と話すべきだわ。そしてあのお金が本当は何だったにせよ、返さないと」

由美はにっこりした。「道理をわかってくれると思ってた。あなたたち、すべてがめちゃくちゃになる前は、本物だったもの」

彼女が建物に入っていった後、私は鍵を手に、しばらくその場に立ち尽くしていた。その時、通りの向こうに見慣れた黒い高級車がエンジンをかけたまま停まっているのに気づいた。

松山健一が南町から戻ってきたのだ。

「健一!」私は彼の車に向かって歩き出しながら、声を張り上げた。

しかし、私の声が駐車場に響いた瞬間、その高級車は唸りを上げて走り出した。あまりに急な発進だったので、私は思わず後ずさりした。

私は霧雨の中、彼のテールライトが消えていくのを見つめながら、そこに立ち尽くしていた。

彼、今……私から逃げた?

続く数日間は、私の最悪の恐怖を裏付けるものだった。松山健一は私を完全に避けていた。会議中、彼はほとんど私の方を見ようとしない。私が近づこうとすると、彼は突然どこか別の場所に急用を見つけ出すのだ。

木曜日、私は機材ベイで彼を追い詰めた。

「健一、私、何か悪いことした?」

彼はエンジン診断の画面から顔を上げたが、その表情は慎重に中立を保っていた。「悪いこと?なぜそう思うんだ?」

「だって、まるで私が疫病神みたいに扱われてるから」

「忙しかっただけだ」

「嘘よ」その言葉は、意図したよりも鋭く出てしまった。「何があったの?私たちの間、うまくいってたじゃない。なのに今じゃ、同じ部屋にいることすら耐えられないみたい」

一瞬、彼の黒い瞳に何かが揺らめいた。だが、すぐに仮面が元に戻った。

「我々の関係を考えると、仕事上の付き合いに徹するべきかもしれないな」彼は極度の丁寧さで言った。

我々の関係。まるで私がビジネス上の取引相手であるかのように。

それで終わりってこと?また他人同士に戻るの?

「わかったわ」私は彼の冷たさに合わせるように言った。「純粋に、仕事だけね」

立ち去ろうと背を向けたが、彼の声が私を呼び止めた。

「理恵。リハビリ用の機材は、いつでも使える」

温かみも、気遣いもない。ただの、医療機器に関する丁寧な念押し。

私は、名付けたくない感情で胸を締め付けられながら、歩き去った。

一体、私は何をしでかしたっていうの?

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