チャプター 62

ライルは家に寄りつこうとしなかった。片時もだ。二度ほど戻ってきたが、物資を置いてすぐに立ち去った。妙な電話も受けているようで、どこか挙動不審だ。エリオットは彼に対して疑念を抱き始めていた。

エリオットが街を出る話を切り出すたび、彼は言い訳をして、慌ただしくアパートを出て行ってしまうのだ。

ついに痺れを切らしたエリオットは、ある日、彼の後をつけることにした。これ以上、はぐらかされるのは御免だ。兄が何を企んでいるのか突き止めたかった。

少なくとも兄と一緒に逃げるつもりなら、事情を知っておく必要がある。特に、何かを隠している様子なら尚更だ。

エリオットは匂いによる追跡が得意ではなかったが、兄...

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