56話

バスティアンの視点

「マーキングしようとしていたわね!」

セレーネの言葉が欲望の霧を突き抜けて、私は茫然と後ずさりする。彼女は正しかった、私は彼女をマーキングしようとしていた。

本能が完全に私を支配し、アクセルは以前と同じように彼女をマーキングするよう何千回も促していた。だが、かつての自制心はもう失われてしまった。三年間、運命の伴侶が死んだと思っていたのに、再び彼女にキスするのは抗いがたい誘惑だった。もし彼女をマーキングし、あの焼けつくような所有の印を刻めば、永遠に彼女を私に結びつけ、世界中に彼女が私のものだと宣言することになる。そうすれば、彼女は二度と逃げられなくなる。

今でさえ、彼...

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