60話

セリーネの視点

こんなことがあるはずない。

2分前まで私は義母の温かさと愛の言葉に包まれていたのに、今は足元の絨毯が突然引き抜かれて、本当に倒れそうになっている。

確かにフェリーでのバスティアンの言葉には驚き、恐怖さえ感じた。彼が「見てみよう」と繰り返し呟いていた様子から、こんなことをするつもりだと疑っていた。でも、それがすでに実行されていたなんて想像もしていなかった。彼に対抗する時間があると、何か計画を立てる余裕があると思っていた。

「どういう意味?」私はかすれた声で尋ねる。「もう言ったでしょう、彼女はあなたの子じゃないって」

「そう言ったね」バスティアンは鋭い舌で認める。「だが確...

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