75話

セレーネの視点

リース橋は、ラグーンの青緑色の水面に浮かぶように架かっており、その銀色のケーブルと頑丈な床板は結晶のような水面に映り込んでいる。昼食休憩が遅い数人のシフターや労働者たちが橋の長さに沿って点在しているが、誰一人として私が想像していたならず者のようには見えない。

不安が私の腹の中で渦巻いている。何かがおかしい。確かに、リラが連れ去られてから純粋な苦悩しか経験していないが、これは違う。この会合について何か違和感がある。ただ、具体的に何がおかしいのかは指摘できない。容疑者らしき人物が見当たらないことも一因だが、誘拐犯がこんな公共の場所で、それも真昼間に会合を求めるなんて信じられない...

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